音楽 CD 寿命

日本では1982年の秋に発表され、長きに渡って親しまれてきた音楽CD(以下単にCDと表記)だが、最近になってやっとその終焉が身近に感じられるようになった。録音物の受け渡しが物質的媒介物と切り離されてからすでに久しい現在、これからは現存する膨大な量のCDの維持、管理へと注意が向けられてゆく中で、CDは以外に脆い生産物であるという事実が、徐々に明るみに出てきている。

ディスクの寿命に関してはすでに1982年秋の初出時に、いくつかの見解が公表されていた。とはいえそれは適切な保管状況を前提として30年から100年という極めて曖昧な予想に終始するものだった。現在その下限である30年をすでに越えてはいるものの、未だに当時のディスクは問題なく再生できている。音楽CDのデータはピットと呼ばれるくぼみをつくることで記録されており、レーザーによる色素変化を用いて記録するCD-R等に比べ、安定性が高く長持ちするといわれている。だがその一方で、問題が生じ再生が困難になるディスクが出始めている。

Damaged Music CD

写真は筆者のディスクを撮影したものだが、ひとつは記録層が剥離し、もうひとつは記録層全体が腐食し変色している。前者においては大きなデータの欠落が、また後者においては素材自体の劣化が、再生を不可能にする。これらはドイツと英国で1990年代初頭に製造されたディスクで、適切な環境で保管しており、さしたる傷もなく使用頻度も高くない。無数に出回っているディスクが一斉にそのような状況に陥るとは考えにくいが、何らかのかたちによる経年劣化は避けがたそうだ。

物質的な問題を別にしても、やはりCDは分が悪い。かつては高音質を売り物にしたCDだが、もはやその特性は時代に取り残されている。CDはその特性上データを44.1kHz/16bit(1411.2kbps)で記録するが、すでに録音現場では96kHz/24bit、あるいはそれ以上のデータ処理が通例となっており、CDはそれをダウンサンプルして収録する。いかなるリマスターを試みても、またどのようば新素材を用いてみても、CDがそれ本来のスペックを越えることはない。

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