ペーター・ルジツカ(Peter Ruzicka)、弦楽四重奏曲集

ペーター・ルジツカ(Peter Ruzicka、1948 -)は指揮や教育をはじめとして、オーガナイザーとしても活躍する現代ドイツを代表する作曲家のひとりである。彼はHamburg Conservatoryでピアノ、オーボエと作曲を、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(Hans Werner Henze、1926 - 2012)とハンス・オッテ(Hans Otte、1926 - 2007)に作曲を学んだ。加えてミュンヘン、ハンブルクそしてベルリンで音楽学と法律を学び、博士号を取得している。ルジツカは1996年にヘンツェを引き継いでミュンヘンビエンナーレの芸術監督に就任し、2002年から2005年までのあいだはザルツブルグ音楽祭の芸術監督を務め、様々な話題とともに同音楽祭の革新にも寄与した。独奏曲の小品からシンフォニーやオペラに至るまで多岐にわたるルジツカの作品は、音楽史的伝統を尊重しつつ、流行としての現代音楽からは一定の距離を置く彼の姿勢によって支えられている。

そのように多彩なルジツカの作品群の中から、このアルバムでは5曲の弦楽四重奏曲が選ばれている。「Introspezione」と「"...fragment..."」が1970年、「Klangschatten」が1991年、「"...uber ein Verschwinden"」が1992年、そして「"...sich verlierend"」が1996年の作品で、朗読を伴う「"...sich verlierend"」では、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau、1925 - 2012)がその役割を演じている。

ルジツカの弦楽四重奏曲はアントン・ヴェーベルン(Anton Webern、1883 - 1945)の楽曲や、特にパウル・ツェラン(Paul Celan、1920 - 1970)の詩作品との関連性が指摘される。ツェランは言語形態をその痕跡へと極限にまで縮小、還元しつつ、自身の存在から自身を描き出したといわれるドイツ系ユダヤ人の詩人である。「"...fragment..."」はツェランへのレクイエムで、死に関する思索を音楽として再現したものだが、それから約20年の時を経て作曲された消滅がテーマとなる「"...uber ein Verschwinden"」以降の作品でも、こうした終末論的視点が継承されている。ルジツカにとって消滅は重要な意味を持つのだが、彼の弦楽四重奏曲においては、音楽聴取の限界点を探りながら、過去の記憶の痕跡と現在との葛藤が描き出されている。ルジツカの、とりわけ比較的初期の作品の特徴のひとつに「作業途上」という概念があるが、こうした葛藤の体現が作品の完成形を拒むようである。

String Quartets: Arditti Qt

  1. "...uber ein Verschwinden"
  2. Klangschatten
  3. "...fragment..." Five Epigram For String Quartet
  4. Introspezione - Documentation For String Quartet
  5. "...sich verlierend" For String Quartet And Spoken Word
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